
【松本恵奈×金子恵治 スペシャル対談】
10周年コラボレーションアイテムの背景と二人のモノづくり。
ーお二人の出会いは??
- 出会いはいつだろう??
- L’ECHOPPEの「LE」の発売の時にゆりなさんと来ていただいて。
- あー!ゆりなと一緒に初めて金子さんのお店に行った時でしたね。
- LEのシャツが沢山のサイズあったのに驚いて。何サイズ展開でしたっけ?
- あの時は9サイズ展開です。白いシャツで。
- そうそう。白いシャツがずらっとかかっていて。
- ちゃんとしたシャツを買ったのは金子さんのLEが初めてで、大切にしています。
- 金子さんのことを思い出しながら今もたまに着てる。(笑)
- ははは(笑)嬉しいな。
- あの後、少し間は空いたけどご飯行ったりお茶したり、気がついたら仲良しになってましたね。
- そうでしたね!その流れで最初のコラボレーションもしましたね。

ー初めてのコラボレーションは
松本恵奈×金子恵治×フルーツ・オブ・ザ・ルームのパックTでしたね。
今回またコラボレーションしようとなったきっかけは何だったんですか?
- あー、でもCLANE10周年ですね。
- 私のアタックで。(笑)
- アタックで!(笑)
- 10周年はCLANEとしても10年という大切な節目でもあって、そのタイミングで今までCLANEに関わってきてくれた人とか、
- お客様が喜ぶものは何だろうなと考えた時に色々な人の顔が浮かんだんですよね。
- その中の一人が金子さんで、何か一緒にできたらいいなと思って私から声をかけたんですよね。
- そうでしたね。
- ありがたい事にお受けいただいて。
- 10周年の節目で僕の名前が上がるなんて光栄だなと思って!
ーあの時とはまた全然違うコラボレーションですよね。
どういうイメージで作られたとかはありますか?
- 完全に今回は僕が関わって何か作るというテーマしかなかったので、
- それで、今回一から洋服を作ってみようとなりましたよね。
- 10周年だからといって10にかけた何かとかそういう事でもないというか。
- でも、せっかくだから純粋にやりたいことをやりたいと思っていて。
- 僕から見た”恵奈さんが着る服”を作りたいなと思って製作しました。
- 以前から恵奈さんはCLANEでの一面もあるけど、そうじゃない一面もあると思っていて。
- 今までなかったところを引き出したいと勝手に思っていました。
- それはずっと金子さんから言われているかもしれない!
- そうですよね!(笑)
- CLANEでの私ではなく、別のゾーンの私の一面も見て見たいよね!と何年も前から言ってくれている気がしていて。
- それで、今回一から洋服を作ってみようとなりましたよね。


ー今までのCLANEにはあまりないエッセンスが入っていて新鮮に感じています。
今回のコラボレーションアイテムはシルエットやサイズ感も
何かこだわりはありますか?
- 恵奈さんは”THE女性”なので、そこに僕の得意なメンズのアイテムみたいなものを持ってきた時に
- どう合わせるか?その中に、普段見られない恵奈さんのスタイルが現れるんじゃないかなと思っていて。
- まずはメンズを作ろうというところから初めて、
- 恵奈さんにどうアジャストしていくかっていうのを一から考えて作っていきました。
- でも、合わせるというのはフィットさせるということじゃなくて、
- 余白を持たせながら作っていく感じでした。
- 当初、流石にウエストは女性に合わせてからオーバーサイズっぽく作るみたいなことを
- 想像していたんですが、実際作っていくとウエストは大きいままでいい!と恵奈さんから意見が出てきて。
- 合わせすぎず絞ってズドンと履きたいだったりとか、僕からしたら思いもよらないアイデアが出てきましたね。
- 今回作っている時、すごく新鮮だったかも。
- 普段お互いメンズとレディースで違う畑でものづくりをしているけど、
- その感覚すごく良いからそのままで良いかも!と変に変えずに”このままが可愛い”が
- お互いにあって。いい感じに落ち着いてこの形になりましたね。
- 僕もウエストは大きいまま絞る方が絶対いいとは思っていて。
- でも、売り物にしたりとか女性が着た時に着心地が悪いんじゃないかとか想像していくと
- ウエストは合わせていかなきゃなのかなと思っていたんだけど、
- 恵奈さんは割と僕が思ってる方がいいって素直に言ってくれて。
- 結果的には僕も全然妥協しない形のフォルムができたのかなと思ってます。
- 一緒にやっていくうちに意外と無いなこういうアイテム!
- と思いながらワクワクして作りました。
- すごく新しいゾーンの服が作れたなと。面白みがあって楽しかったです。
- 僕もです。

ー恵奈さんは今回のコレクションでいつもと違うなと思うところはありますか?
- 服の作り方が全然違うなと。普段CLANEでやっている事と違って、
- うちのスタッフ含め「新鮮で可愛い~!」ってなりました。
- 2人で作ったからこそ出来た形みたいなのがちゃんと作れたのが、本当にいいコラボレーションになったなと思います。
- メンズ服を着る女性というイメージで、でもメンズすぎず、女性にも合わせすぎてない服。
- ニュアンスを大切にしている服ですね。
- オーバーサイズとかは沢山あるし、
- メンズ服を着るみたいなことと女性のオーバーサイズの服を着ることってまた全然違うじゃないですか。
- でも今回のコレクションを男が着るとすごく良いみたいな事ではなくて、
- あくまで女性が着て成立するアイテムになりました。
- そうですよね。確かに雰囲気や作り方、
- 仕立て方にメンズっぽさを感じるけど、女性の洋服なんだよっていうところが私は結構好きだった。
- そこは絶対守らなきゃいけないところかなと思って作りましたよね。
- 意外と最初言っていた話と意外とブレずに着地できましたよね。
- 実はそうなんですよ!(笑)結果的に全然ブレずに作れましたね。
- 途中、こんな感じ?あんな感じ?って試行錯誤しながらでしたけど、
- なんだかんだ一直線にこれたと思います。(笑)これも金子さんのおかげです。
- いやいやいや。(笑)製作チームも男だらけでしたよね。
- 男だらけだった〜!(笑)
- 今回ドレスのアイテムを作るのが得意なチームで製作出来ました。
- でも女性の服をめちゃくちゃ知っているチームではなかったから、
- そこに女性の意見を反映させていくっていうメリハリがしっかりあって、
- 結果こういうちゃんとしたコンセプチュアルなアイテムが出来たかなと思っています。
- シンプルなんですけどね。シンプルなんだけど、そこにコンセプトがしっかりあって他に無いものが出来上がりました。
- 意外と難しいじゃないですか?そういうものを作るのって。だから結構価値があると思っています。

ー生地選びのこだわりはありますか?
- 生地は本当に間違いなくCLANEさんでは扱わないだろうなと。
- ブルーのシャツは少し女性らしさもあるけど、
- 今恵奈さんが着られているブラウンのシャツとか結構がっしり硬めの生地ですよね。
- 元々は、くらと馬の間に入れる馬布(ホースクロス)に使われる生地でめちゃくちゃ強いんですよ。
- くらと馬の間で擦れても破けないような生地なので。
- それをわざとドレスのシャツに落とし込んで、しかも女性に着ていただくという。
- ちょっと滅茶苦茶なんですけど、そのハリコシと女性の柔らかのギャップが良いというか。
- 男が着るとそのまんまになってしまうんですけど。
- 男性ではこの生地はあまり使わないんですか?
- 割と好きですね。ただ、面白みはないですが。
- 恵奈さんがきているツイードジャケットとの合わせもすごくいいですけど、
- 男性だと現代的に着るっていうのがかなり難しいなと。
- 女性が着るんだったらそのギャップも含めていいんじゃないかと思ったんですよね。
- 普段僕自身が憧れてるけど、やれないものを今回結構選びました。
- ブルーのシャツにしてみても、テロテロした質感が色気があっていいなと思うけど、
- 男性が着ると色気がありすぎて僕は着にくいなと思うんですよね。
- だから、今回の企画にぶつけたというか。
- もう一つのネイビーのスーツに関しても、
- オーソドックスなネイビーだから逆に王道すぎて難しい部分があって。
- でも女性が着たらギャップが生きるなと思っています。
- 普段僕が好きなものだけど、自分では着れないものを今回作ったという。
- ここにおじさんの顔がくっついていたら、ダンディな感じになるけれど、
- 今回はあえて女性が着る事によって、全く違う見え方になるのが今回の肝かなと思っています。

- 結構はまりましたね!
- そうなんですよ。
- 普段CLANEだと、もう少し軽い方が、とか柔らかい生地を選んで洋服作りをすることが多いので、
- 今回の企画は良い意味でメンズらしさを残して作れて、そういう意味でも作り方から素材選びまで新鮮でした。
- 思いのほか、共感していただけたので嬉しかったです。
- めっちゃ可愛いってなりました。
- そして意外とこの生地は着ていくうちに育っていきます。
- ジャケットも着ていくと、程よくシワが入ってきたりだとか、
- だんだんニュアンスが出てきて、着たシワがすごい良い雰囲気になる。
- シャツもあたる部分は徐々に擦れて味が出てきやすかったりとか。
- え〜!楽しみ。自分で育てていくんですね。
- 自分で育てていくっていう概念ってあんまり無いですか?
- そもそも育てていくみたいなお洋服はメンズの方が感覚として持っているかもしれないですね。
- 女の子は「可愛い」「好き」とか感覚でお洋服を捉える人が多い気がしてて。
- だからこそ、育てていく服って新鮮でいいですね。
- 育てていって欲しいです。
- 今恵奈さんが着てても、この自然なシワってすごい素敵だと思うんです。
- シワって悪に捉えがちですが、今回はそれがプラスに働くと思うので。
- ガシガシ着ていってもらったら、より良くなっていくんじゃないかなって。
- どんどん自分にフットしていくようになるんじゃないかなって感じがします。
- 馴染んで柔らかくなっていくんだろうなって思う。
- さっきLOOK撮影の時もパンツのシワをあえて整えたら、
- あれ?自然なシワがあったほうが雰囲気があって良かったよねとなった事とかが
- まさに僕が話していることと近いというか。
- ニュアンスが加わることで、さらに良く見えるアイテムたちだなと。
- そうですね。作っている時は整えながら作ったけど、着るときはニュアンスで着てねと。
ー今回一緒にものづくりをしてお二人の印象は変わりましたか?
- 恵奈さんはいい意味で頑なな、それこそ何事に対しても自分の想いとか芯がある方だよね!
- って思っていたんですけど、ファッションの話をするとすごい柔軟だなと。
- 私結構柔軟でしかないですよ!(笑)
- 本当にそうでしたね。
- そこは僕の中では意外でした!
- 私は金子さんの方がこだわりが1000倍くらい強いと思っていますよ。
- そういう部分もありつつ、意外と自由ですよ。(笑)
- そういう意味で言うと、僕はもっと共感してもらえない気がしてたんです。
- というのも、今回の企画は恵奈さんとかCLANE
- 僕がわざわざやろうと思っていたから結構難しいかなと思っていたんですけど、
- 思いの外みなさんが可愛いって言ってくれて。
- それでいいの?と思う部分も共感してくれたり、むしろそれが可愛い!と言ってくれたり。
- それの連続だったのが僕としてはすごい楽しくて。
- もっといろんなアイテムを作りたくなるぐらい、一緒にやっていて結構テンションが上がったんですよね。
- いいですね〜!また一緒にやったり、次は他のアイテムを作ってみたりとか。
- みなさんに着ていただけたら、次もあるかもしれないですね。
- 私はメンズの方って女性より知識も含めてこだわりが強い印象があって、
- それが今回モノづくりした時にどんな感じになるかなと思っていたんですけど、
- 一緒に作るからこそ今までにないものがいいし、
- シンプルだけどそこに私たちの感性と金子さんのこだわりがうまく入ったアイテムになればいいなと。
- ほんとにいい感じにひとつになったのが良かったです。
- ちょっとこだわりすぎちゃったんで、ややメンズ感が強いかもですが。(笑)
- ほんとに良いアイテムができました。
- 断言できるのは、今シーズンおすすめですとかではなくて、
- 来年でも再来年でもクローゼットにあっていつでも着られるものに仕上がったなと思います。
- わかる!ちゃんとした時にも着たくなるアイテムですよね。
- トレンドとかじゃないから、それが良さですよね。洋服として。
- トレンド性はかなり無視してやっているので、タイムレスなお洋服になったなと。
- 普段ワンシーズンしか着られないものを買われている方達にとっては
- 少し高いと思われるかもしれないですが、長く着られるお洋服なので。
- そういうお洋服を探している方って意外と多いですよね。
- 多いですよね。
- でも、そういうアイテムが欲しくても意外と普段買っているお店ではなかったり、
- きっかけがなかったら買わなかったり。あと出会いもありますよね。
- 少し良いものを買うのって勢いも大切じゃないですか。
- CLANEだけだったら作れていないアイテムなので、
- 私と金子さんのコラボレーションだったからこそこの形で、このニュアンスで作れたと思います。
- 色々な女性に着こなして欲しいですよね。
- ほんと楽しみですよね。ぜひ、着る理由を見出して欲しいな。
- 着る理由っていいですね。
- 多分、自分の中に何かないと着ないと思うんですよね。
- 異性とか気にしていくと、絶対こうはならないし。
- 逆に金子さん異性じゃないですか。こういうスタイルの女性はどうですか。
- 僕はかっこいいと思っちゃうんで。(笑) こんなの着てたらやばくないですか?本当に居ないから。
- だから、こういうスタイルに魅力を感じる男性もいると思います。
- 女性が男性と会う時にあえて選ぶ洋服だとは思わないんですけど、
- 意外とそういう服を着ている女性に憧れる男性は多いと思います。
ー二人の“着る理由”とは何でしょうか?
- 着る理由って、着る場所がどこかだけでなく、なぜ自分がこの服を買ったのか。
- 私服で着る時も、なぜ今日この服を選んだのかといった理由ですよね。
- 見た目の問題だけじゃなくて、内面というところもすごく大事なのかなと思っています。
- でも、今までそういう風に思ってなかった人が着て新しい自分を発見してくれたらいいなとも思う。
- 普段CLANEを着てくれている方はもちろんだけど、今回のコラボレーションのお洋服から入ってきてくれて、
- こういう自分もいいなと思ってくれたら嬉しいな。
- 元々スーツとかって男からしたら戦闘服じゃないですけど、ちょっと強くみせるとか、
- プレゼンの時に着ていると急に説得力でるなとか。そういう力があって。
- だから逆に自信がないっていう子達にとっては武器になる。これを着ればやれるんじゃないかとか。
- かっこよく自分を見せたい時とか、すごいちゃんとしたい時とかに着るともっと頑張れそうですよね。
- とてもわかります。
- これからどういうシーンで恵奈さんが着てくれるのか、とても楽しみです。
- 多分普通に会社行く時とかに着るかも。私は結構日常で着ると思います。
- いいですね!
- あとは学校に着ていきそう。
- かっこいいな〜。これ着て車とか運転しているところ見たいですね。
- 絶対かっこいいですよね。実は私が車買う時も金子さんに相談しましたよね。(笑)
- 金子さんとは好きな女性像が結構似ていて、今回のお洋服もお互いのイメージがぴったり合ったんだろうな。
- 10周年だからこそのアイテムだと思います。そういうアイテムが作れて良かったです。
- 一緒にお洋服が作れて本当に楽しかったです。
- お客様にとっても、今回のコラボレーションがいいきっかけになってくれたら嬉しいですね。

- 金子恵治
「ブティックカンパニー」代表。ファッションディレクター。
1973年生まれ、東京都出身。
〈EDIFICE〉でバイヤーを務めた後に独立し、〈L'ECHOPPE〉の立ち上げに携わる。
2022年、東京・北青山に「BOUTIQUE」をオープン。
ディレクションから買い付け、販売まで全てを手掛け、
デザイナーとのコラボレーション商品やヴィンテージアイテム、オリジナル商品を取り扱う。
2024年には自身初のファッションブランド「FOUNDOUR」をリリース。